臺展審査は十月十五、六の兩日に亘つて樺山小學校講堂に於て行はれたがその結果は十六日午後三時半より幣原審査員長、小林、松林兩審査員始め鹽月、郷原、石川、木下各審査員及び石黒文教局長立會の下に審査の結果を發表した。
◆東 洋 畫
出品者 | 六五名 |
總點數 | 一〇八點 |
無鑑査 | 二點 |
入選 | 二七點 |
合計 | 二九點 |
落選 | 七九點 |
◆西 洋 畫
出品者 | 二〇八名 |
總點數 | 四五〇點 |
無鑑査 | 六點 |
入選 | 六三點 |
合計 | 六九點 |
落選 | 三八一點 |
而して右の中東洋畫の新入選は東洋畫に於て十八點、西洋畫に於て三十六點の多數で特に本島人の多數入選が目についてゐる。
畫題と作者
○印は新入選、無は無鑑査
◆東 洋 畫
無 | 澳底の海 | 村上英夫 |
無 | 逝く秋 | 同人 |
○ | 牧場所見 | 潘春源 |
| 曉靄 | 野間口墨華 |
○ | 仙境の秋 | 佐々木栗軒 |
○ | 夏山欲雨 | 同人 |
○ | 水牛 | 黄添泉 |
| 圓山附近 | 郭雪湖 |
| 語らひ | 富田彌太郎 |
| 冬 | 清水吉藏 |
○ | 范謝將軍 | 國島守 |
○ | 白菊 | 中村翠谷 |
○ | 貓 | 同人 |
○ | 八獎溪 | 徐清蓮 |
○ | 春宵の圖 | 同人 |
| 庭の茂 | 林英貴 |
| 山羊 | 同人 |
○ | 池畔の夕 | 田中謙堂 |
○ | かんな | 佐藤敏子 |
○ | 高嶺の春 | 那須雅城 |
○ | 深山の秋 | 那須雅城 |
| 清流 | 高橋源次郎 |
○ | 朝 | 秋山春水 |
○ | 太陽を射るもの | 同人 |
○ | 葡萄 | 蘇氏花子 |
○ | 露けき朝 | 蔡氏品 |
○ | 蓼 | 蔡氏品 |
| 野分 | 陳氏進 |
| 密柑 | 同人 |
◆西 洋 畫
無 | 二人 | 陳植棋 |
同 | 三人 | 同 |
同 | 卓上靜物 | 同 |
同 | 龍のある壺 | 廖繼春 |
同 | 街頭 | 同 |
同 | 夕暮の迎春門 | 同 |
○ | 部落 | 片山龜雄 |
| ダリヤ | 濱武蓉子 |
| 風景 | 片P弘 |
| 靜物 | 楊佐三郎 |
○ | 上海の建物 | 吳茂仁 |
| カンナ | 栗山綾子 |
| 風景 | 川崎守人 |
○ | 夕暮 | 山本磯一 |
○ | ヴアンダ蘭を吊したる庭 | 御園生義太 |
○ | 廟前 | 同 |
○ | 自畫像のスケツチ | 柳コ裕 |
○ | 丘 | 謝清連 |
○ | 泊船 | 李康濘 |
○ | 榕樹 | 緒方博 |
| 龍山寺 | 陳澄波 |
| 西湖運河 | 同 |
| 靜物 | 稻垣龍一 |
○ | 夏の東門 | 蔡媽達 |
○ | 娘 | 田中ェ |
| 練光亭 | 藍蔭鼎 |
| 石材ある風景 | 船曳實雄 |
○ | 靜物 | 陳炳芳 |
| 臺南の裏町 | 高橋清 |
○ | 家鴨を飼ふ家 | 佐伯久 |
○ | 夏の午夜 | 李澤藩 |
| 紫陽花 | 長崎清子 |
○ | 靜物 | 鄭獲義 |
| 卓上靜物 | 木村義子 |
○ | 茄苳溪海岸 | 吳松妹 |
○ | 枯木飛景 | 同 |
| 三峽の町裏 | 李梅樹 |
○ | 南國廟宇 | 王新嬰 |
| 町の裏 | 李石樵 |
○ | 滯船 | 楊啓東 |
| 池畔 | 山中七男 |
| 雙溪夕照 | 倪蔣懷 |
| 雞頭の花 | 河P健一 |
○ | 魚 | 簡綽然 |
| 樹木 | 渡邊悟 |
○ | 虹 | 進藤常雄 |
| あざみとひまわり | 素木洋一 |
| 雞頭の花 | 同 |
| 夜の靜物 | 中村常彦 |
○ | 芝居 | 鈴木千代吉 |
○ | 淡水河を望む風景 | 稻垣進 |
| 石をたゝむ道 | 後藤大治 |
○ | 植物園小景 | 中村操 |
| 池 | 竹内軍平 |
| 百日草 | 倉岡彦助 |
○ | 淡水風景 | 本名文任 |
○ | 裸婦 | 張秋海 |
○ | 植物園の午後 | 北川義雄 |
| リンゴのある静物 | 古川義光 |
○ | 少女 | 小笠原ミツヱ |
○ | 南國の椰子 | 蔡朝枝 |
○ | 朝の港 | 同 |
○ | Yの家族 | 山田新吉 |
○ | 木の間 | 武井昌一 |
○ | 前庭ある洋館 | 鹽月赳 |
○ | 水郷 | 喜井操 |
○ | 農村の平和 | 末松勇 |
| アトリエ | 蒲田丈夫 |
○ | 秋の村落 | 愛甲彰 |
幣原審査委員長談
第一回審査の際は臺灣にゐる優秀な者のみが審査に當つたのであつたが今回は小林松林の兩大家が態々内地から加つて下さつた、兩大家は日本の大家と云ふのみではなく世界的の大家であると私は思つてゐる、其結果が審査は極めて迅速で且つ公平に行はれたことを私は斷言して憚らない、内臺人の別を問はず又何流とかの流義は勿論人物職業などは一切おかひなしに公平に鑑査をして藝術に秀でゝゐたものゝみをとつた大家が加つてゐるだけに各審査員も出品人も必ず満足であらうと思つてゐる前回と比較すると出品畫に就ては非常な進歩が見えてゐる此の傾向なら将来も益々進歩するであらうと思はれるが斯くてこそ文運も隆盛になり本會の目的も達せられるであらう。
小林審査員談
始めて拝見したのであるが、驚いたことには私の考へてゐたのよりは餘程よく、昨年あたりはとても見られないのがあつたさうだけれど、今年は見るにたへないと云ふやうなのは一枚もなかつた。何れも全く自然の印象から得た畫が多く殊に本島人の畫に非常によいのがある。私達が意外に感じたことであるが本當に純がある、之は餘り他のことを知らない為によいのではないかと思はれるのであるが歡迎ばしいことである。内地から来た人は色々な外國のよいものや、内地のよいものを見てゐる結果どうも真似が出てゐる、此の頃色々な美術に關した雜誌が澤山あつて、技術よりは理論が先に進まんとする傾向が見えるが之は初學者の最もあやまりやすいことで氣をつけねばならないことである、それから内地人では既に天井迄もとゞいてゐるので、近頃の若者は目先をかへて他のことをしてゐる。かゝる人は思ひきつたことをしたり言つたりしてゐるのでどうもそれが内地人の延びない因ではないかと思はれる。今回の臺展出品畫にはかゝる疑ひのものは一つもない、皆本當に純な氣持ち畫いてゐる、どの畫にも個性の表現があつて真似はない之はほんの初學者に對する註文だかどうか此の儘で進んでもらひたいものである。
松林審査員談
日本畫は出品數百八點で非常に少いが、之は帝展でも近頃さうである。東洋だから東洋畫が多さうなものだがどう云ふ原因かさうは行かぬらしい、私は始め花鳥山水が多いだらうと思つてゐたのであるが却つて人物畫が多かった、そしそれによいものがあつた、私は成べくよい方に向ひ伸びんとする素質のある者と云ふ樣な氣持ちで見ました。遊て戯的な遊び半分と云つた樣なのはとりたくないと思つたのである、それから本島人とか内地人とかの差別はつけずに熱のある藝術品をとつた、何だか題材もよいし面白いと思ふのでも破綻の多いのがあつた、どうか本島は題材の優秀なものが多いのであるから今後も臺灣獨特の色と熱からきた藝術が完成さるればよいと思つてゐる、東都には東都、京都は京都、大阪は大阪と夫々郷土藝術がある如く本島にも郷土藝術なるものゝ完成が望ましい。
回前頁
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